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電柱の足元に咲く小さな花の歴史を君はまだ知らない

私も知らない。 日々思うことや思い付き短編小説風コラム風な記事を不定期で投稿します。 基本的にすごくしょうもない内容です。 知的要素ゼロがお好きな方向けです。

サオリちゃん。

『子供の頃の不思議な発言』

という特集を見て、ふと昔の友達のサオリちゃんのことを思い出しました。

 

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とっても不思議なお友達だったサオリちゃん。

そんなサオリちゃんにまつわる、最強の不思議エピソードです。

20年以上経った今思い返しても、まるで狂気の沙汰です。

 

 

母親の実家は中国地方のとある田舎町で、

幼い頃はそこに少しばかり住んだことがある。

田舎ではあるが、そこは市の中心部に近いところで

田舎なりに多少栄えていた場所だった。

 

木造の家で、玄関は横に開くガラガラタイプ。

鍵は棒みたいなのを突っ込むタイプで、普段は鍵をかけず出入自由。

典型的な「昔の家」だった。

 

親は関西に引っ越したので、田舎のその家には小学校が休みに入る度に帰省した。

夏はカラっとした暑さで、冬は雪だらけ。

そんな町だった。

 

お隣の酒屋さんには1歳上の男の子がいて、

思えば私の初恋はその子だったんじゃないだろうか。

 

彼の家の前は小さな公園があり、

日が落ちる頃まで彼とバスケをして遊び、祖母に怒られたものだ。

 

その公園の敷地の中に、サオリちゃんの家があった。

 

サオリちゃんは私と同い年。

地元の関西では仲の良い友達があまりいなかった私にとって、

彼女は小学生までは一番の親友だった。

中学に上がり、田舎の家が引っ越ししてしまってからは

会うことも連絡を取ることも出来なくなってしまった。

 

夏休みに田舎に帰ったら、一緒に公民館へ行き毎朝ラジオ体操をしたり、

サオリちゃんの家に遊びに行き、キョンシーのビデオを観たり

一緒にお菓子を作ったり、ファミコンをして遊んだりした。

近所の別の友達の家に一緒に遊びに行って

黄色いスイカを食べさせてもらって興奮したこともある。

空になったスイカの殻を頭に乗せて

「スイカあたまー」(キョンシーシリーズに出てくる登場人物)

という遊びをし、そこのお母さんに怒られたのも良い思い出だ。

 

冬休み、雪道を散歩していた時

私が溝にはまってしまい、長靴に大量の雪が入り込んだことがある。

足は溝から抜けなくなり、泣きそうになっていたら

一緒になって泣きそうになってくれて

助けてはくれなかったのも良い思い出だ。

(その後、通りすがりの大人に救出してもらった。)

 

優しくて、どこか抜けているサオリちゃん。

私はそんなサオリちゃんがとても大好きだった。

 

そんなサオリちゃんだが、

小学生ながらに「不思議な子だなぁ」と思う節がいくつかあった。

 

彼女はよく、私の知らない世界にトリップしていた。

 

ある日、彼女の部屋で遊んでいた時のこと。

日が傾き始めて、西日が作り出すオレンジ色の優しい光が

カーテンの隙間から差し込んでいた。

 

そろそろ帰らないと。

そう思っていた私を察知したのか、

サオリちゃんは突然、小声で「しーっ」と

人差し指を口に当てがいながら、私にある物を見せてくれた。

 

当時、女の子の間で流行した「匂い玉」だ。

 

小さなケースにカプセルがいくつか入っており

なかなかに強烈なオレンジやイチゴの香りがする

見た目はとても可愛いファンシーグッズだ。

 

もちろん、口には入れてはいけない代物。

小学生くらいの年齢になると、誰もがそれを理解しており

純粋に匂いをかいだり、他の匂い玉と混ぜて

どれがいい組み合わせか、なんて実験をして遊んだものだ。

 

何の変哲もない、サンリオのキャラが描かれた

オレンジ色の匂い玉のケースを、そっと私に見せたサオリちゃん。

※以降、セリフは標準語でお送りします。

 

「これね、誰にも言ったらダメだよ。」

 

匂い玉に何の秘密があるんだろう?

私は不思議に思った。

私だって普通に持っているし、さして特別なものでもない。

 

「これはね、秘密の薬なんだよ。」

 

私は一気に混乱した。

今目の前にあるものは、紛れもなく誰もが知っている

あの「匂い玉」であることに違いなく、

それ以外の何かと言われたところでイメージもつかない。

匂いだってする。

とてもではないが、親友の言うこととはいえ

なかなか信用し難い内容だった。

 

例えるなら、目の前にあるのが「バナナ」の形であるにも関わらず

それを「これはリンゴです」と言われているようなものだ。

 

私は恐る恐る聞いた。

「…匂い玉じゃないの?」

 

サオリちゃんは待ってましたと言わんばかりの得意げな表情で

私にもう一度説明した。

 

「匂い玉に見せかけた、秘密の薬。」

 

そこは所詮小学生。

しかも疑うことを知らない純粋な小学生だった私は

あろうことか、それを素直に受け止めてしまったのだ。

 

「どんな薬なの?」

 

サオリちゃんはさらに得意げな笑みを浮かべ、

その効能を私に説明してくれた。

 

「これを一気に10粒飲むとね、サンリオの国に行けるんだよ。」

 

小学生の私の脳は再び混乱した。

 

サンリオのキャラクターは、クリエイターによって作成された

「キャラクター」という一種の作品であり、

パッケージや人形などで具現化されてはいるがそこに生命は存在せず、

その想像上の存在感で世の女児達を夢中にさせている

…という事実は、小学生の私でも心得ていた。

 

その国に行ける、というのは

果たしてどういう意味なのだろうか。

 

冷静に、とにかく冷静になろうと考えた。

考えた先に思いついた答えが「サンリオピューロランド」という

現実世界に存在する施設だった。

 

場所は知らないが、確実に日本に存在し

以前母親に行きたいとねだったことがあるのを思い出した。

 

この目の前の匂い玉を何かすれば

その夢のようなテーマパークに行ける、ということなのだろうか?

 

それならば、匂い玉を飲む飲まないは別として

まだ現実的で理解できる話だ。

 

私は意を決してサオリちゃんに問うた。

 

サンリオピューロランドに行ける…ってこと?」

 

しかし期待とは裏腹に、サオリちゃんの答えはNOだった。

あくまで「サンリオの国」に行ける、という主張だ。

 

愕然とした私だったが、経緯はこうらしい。

 

ある日、サオリちゃんは夢を見た。

その夢の中で、かの有名な白い子猫キティちゃんがサオリちゃんに語りかけた。

「この匂い玉を深夜の0時に10粒一気に飲むと、サンリオの国に行けるのよ」

…と。

 

彼女はなんと、その言葉を信じて実践したらしい。

すると実際に国に行くことができ、

他のサンリオキャラクター達と夢のような楽しい時間を過ごした、というのだ。

 

それはもう、とても楽しそうに話してくれた。

 

あまりにも楽し気に話してくれたので、私まで少し楽しくなってしまった。

そして「私も行けるかな?!」と興奮して聞いてみると

急にサオリちゃんは真剣な表情になり

「ごめんね、無理だと思う」と冷たく突き放した。

 

私はとてもショックだった。

匂い玉を飲むだけで、そんな楽しい体験ができると思っていたのに

それを一言で完全否定されたのだから。

 

「これはね、匂い玉に見せかけた特別なものだから、普通の匂い玉だと飲んだらダメなの。」

と、少し怖い口調で怒られた。

 

さらに、サオリちゃんは付け加えた。

「私以外の人が飲んだら、死んだり帰って来れんくなるかもしれないから、飲んだらダメ。」

 

どんだけ物騒なものを飲んでいるのだこの子は。

思わず突っ込みそうにもなる話だが、まだまだ子供だった私は

「そうなんかぁ。。」と寂しくなりながら納得をした。

 

「ぺぴこちゃんは親友だから、特別に教えたんだよ。」

 

そういわれると、私はすっかり元気になった。

そんな特別なことを教えてくれるなんて、

サオリちゃんはなんて優しい子なのだろう。

 

不信感は拭い切れなかったが、

それでもサオリちゃんが大好きだった。

 

他にもサオリちゃんは、様々な場所に

様々な道具でトリップしていた。

 

当時、ファミコンドラえもんのゲームが流行ったのだが

とある場所で、突然サオリちゃんが

2コンのマイクに向かって「ドラミちゃーん」と叫ぶと、

ドラミちゃんが召喚された。

目が飛び出るほど驚いた私は、何故そんなことが出来るのか尋ねると、

何かしらの道具(これも匂い玉系の何かを飲んだと記憶している)で

ドラえもんの世界に行き、教えてもらったと言う。

 

彼女の様々な体験は、おおかた寝ている間の夢の話だろう

と、小学生の私も薄々気付いていたものの

目の前で体験するといよいよ真実味を帯びてくるというものだ。

 

おそらく、別の友達にこの裏技を聞いていて

さもドラえもんご本人に教えてもらったかのように話してくれたのだろうが、

私はサオリちゃんが大好きなので、彼女を信用することにした。

 

サオリちゃんは、たまにトリップする以外は本当に普通の女の子だ。

一緒にセーラームーンごっこに興じたり

酒屋のお姉ちゃん(5歳上)と少女漫画を読みながら恋愛について語ってみたり、

少し離れた大きめの公園に一緒に遊びに行ったり、本当に普通の女の子だ。

 

ただ夕方を過ぎると、彼女は少し別の世界を見ている気がした。

何だか置いていかれている気がして、少し寂しくなったりもした。

 

彼女は今どこで何をしているか知る術はない。

しかし、今もどこかで元気に過ごしているのだろう。

 

お互いいい歳になっているが、

彼女が本当の意味でトリップしていないことを

ただただ祈るばかりだ。